独りで真っ昼間から蕎麦屋で日本酒をたしなむのが幼い頃からの夢だ
若者が昼間から蕎麦屋で日本酒をのむものではない。そう言ったのは誰だっただろう。まだ酒をのめない頃から蕎麦屋で日本酒を嗜むのに一種の憧れがあった。それは間違いなく池波正太郎著、鬼平犯科帳の影響であろう。随所髄所で火付盗賊改方の鬼平こと長谷川平蔵が待合いのためにそばを啜る。その描写が大層美味しそうで幼心にも大変印象的であった。
店名:そば居酒屋 しあわせ一番町
住所:仙台市青葉区一番町4-4-11川政ビル1F
電話番号:022-721-7307
営業時間:月曜日~木曜日:18時00分~翌03時30分
金曜日、土曜日:18時00分~翌05時00分
定休日:日曜日、祝日(祝前日の日曜日は営業)
参考:webサイト
酒の飲める蕎麦屋。これほど魅力的なものもあるまいて。
外看板の日本酒あります!に逸る気持ちを抑えつつ店員に来店を告げる。店内は右手にカウンター、左手にテーブル。そして奥には小上がりの席がいくつかあるらしい。
1人の私はカウンターに陣取った、カウンターの上に置かれた日本酒の瓶は圧巻だ。
表の看板を見た時から決めていた秋田の純米吟醸「福小町」
産まれは違うが秋田で育った私にとって秋田の酒は特別だ。注文を告げ、さてとて肴のメニューを眺めていたら店員さんが申し訳なさそうな顔でやってきた。
では同じ秋田の出羽鶴にするか――そう思っていたら、店員さんどういった日本酒を飲みたいのか聞いてきて奥から色々と瓶を取り出してきてくれた。
その心遣いがなんとも嬉しい。単純ながら良い店だと私は心を良くする。
結局頂いたのは持ってきていただいた中から島根の「裏死神」。日本酒には珍しく縁起の悪い名前だが意図して付けたらしい。少し酸味があるフルーティな仕上がりで、話にきく表とは対を成しているのだろうと思った。
座った席の目の前には鬼太郎尽くしの日本酒瓶。
店員さんの気遣いを嬉しく思いながら肴を選ぶ。そばがきに心惹かれたが、そばを最後に食べるのだけは決めてきたので、今回は見送り。しかしこれをちびちびしながら日本酒を飲むのも捨てがたい。
散々悩んで決めたのが「ほたるイカ沖漬け」。いい塩梅の漬け具合で日本酒がより美味しく感じられる。さっと出てくるのがまた嬉しい。
「天ぷらの盛合わせ(五種)」1人前。
天ぷらにはエビの頭もついていた。
塩と天つゆでいただく。まず驚いたのが天つゆが温かい状態で出てきたことだ。常温はたまにあるがここまで温かくしたのは滅多に無い、天ぷらが冷めないようにとの配慮なのだろうか。なんとも嬉しい。
えび(頭付)・キス・茄子・アスパラ・きのこの5種類。
ざっくりとした衣の天ぷらで歯触りが小気味良い。火の通り具合も程よく、茄子は柔らかすぎず丁度良い具合に仕上がっており、天つゆをたっぷり含ませて食べると油との相性がとてもよかった。
きのこは旨味が内部に凝縮されており、噛むほどの味わい深い。旬を過ぎたアスパラだが歯ごたえが良く甘みがあった。キスは塩でいただく。身のほっこり具合がたまらなく美味い。えびは言うまでも無く、頭までむしゃぶり比例して酒が減っていく。
思いの他お腹が膨れてきたので、〆の蕎麦を頼む事にした。
こちらの蕎麦はどうやら4種類、その中でもお勧めなのが「益荒男そば」と言われる超極太の十割田舎そばのようだ。さらに太い鬼太の十割蕎麦もあるらしいが、今回はお勧めを頂戴する事にする。
見よ、この太さを。
蕎麦つゆが付いてくるが塩で食べるのも美味しいらしい。ご丁寧にカウンターに食べ方が書いてあった。
この通り従って蕎麦をいただく。
これがまず美味い。
とてもコシが強く噛み応えのある蕎麦だ。噛めば噛むほどの風味が口の中いっぱいに広がり、塩がいい具合に引き立たせてくれる。鼻に抜ける刻みワサビも格別。啜る蕎麦というよりは蕎麦刺しの様である。
量も多く日本酒を追加しようか非常に悩む。〆にと思ったがこれで酒を飲むもの有りだった。
たっぷりと幸せ気分で蕎麦を平らげ1人飲みは終了、締めて3,564円也。
長谷川平蔵ほど粋とは言えないが、私は私で蕎麦屋で日本酒を堪能する。いつかこれが様になる日がくるといいのだが、それはまだまだ先なのかもしれない。
とりあえず次はそばがきで、ちびちび冷酒を嗜んでみようか。ささやかな目標を掲げ、私は今日も国分町の夜をふらふらと彷徨うのだ。
店名:そば居酒屋 しあわせ一番町
住所:仙台市青葉区一番町4-4-11川政ビル1F
電話番号:022-721-7307
営業時間:月曜日~木曜日:18時00分~翌03時30分
金曜日、土曜日:18時00分~翌05時00分
定休日:日曜日、祝日(祝前日の日曜日は営業)
参考:webサイト