こんにちは。ライターのすずき・ちえです。
以前、テレビのニュース番組で見て以来、行ってみたいと思っていた、石巻市の教会「旧石巻ハリストス正教会教会堂」。
宮城県沖地震と東日本大震災という2度の天災により甚大な被害を被りながらも、市民の声などにより復旧を遂げたという話を聞き、どのような建物なのか興味を惹かれました。
今回、教会の内部を見学しながら、その魅力に迫ってみました。
(取材協力:石巻市教育委員会生涯学習課)
旧石巻ハリストス正教会教会堂は、旧北上川河口の中瀬と呼ばれる地区にあります。
付近には、「石ノ森萬画館」や、「いしのまき元気いちば」といった観光スポットがあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
教会は、1880年に石巻市新田町(現在の千石町)に建てられ、現存する木造の教会としては日本最古のもの。1978年6月の宮城県沖地震で被災したものの、現在の場所に移築・復元後に、石巻市の指定文化財となりました。
その後、2011年3月の東日本大震災の津波で甚大な被害を被りましたが、2018年9月に復元工事が完了しました。
現在は宗教施設としては使われておらず、一般公開されています。
建物は一見、洋風に見えますが、屋根に目を向けると瓦が使われていることがわかります。
建物を管理する石巻市によると、「日本の職人の手で洋風に作られた擬洋風建築」で、「日本風と洋風の両方の要素が取り入れられていることが特徴」なのだそう。
中はどのようになっているのか、詳しく見てみましょう。
【一階】信者の集まりに使われた「集会室」
ドアを開けると、一面の和室が目に飛び込んできます。かつて、礼拝以外の時に信者が集まる「集会室」として使われていたようです。
窓辺には、資料や写真が展示されており、教会がたどってきた歴史を知ることができます。
奥には、急勾配の階段があります。
一段一段の縦幅が狭く、サイズ24㎝の私の足で例えると、半分くらいの長さしかありませんでした。両手で手すりをつかみながら、カニのごとく横歩きして上りました。
上っていると、あるお城を見学したときの階段と似たものを感じました。昔の日本の階段の特徴なのかもしれませんね。
【二階】礼拝の場となった「聖所」など
階段を上りきると、赤い絨毯が敷かれた空間が広がっています。一階とは打って変わって、洋風の雰囲気です。
ここはかつて礼拝が行われていた、「聖所(せいしょ)」と呼ばれる場所でした。「升段(しょうだん)」と呼ばれる正面の祭壇には、左右に聖像が飾られています。
升壇の手すりは、木目を塗装で表現した「木目塗り」という手法が、祭壇上部の緑色に塗られた部分には「葡萄唐草文様」が用いられ、西洋の技法が取り入れられています。
二階には聖所の他に、三つの部屋があります。
升壇に向かって左右に対になるように祭具室、奥には至聖所(しせいじょ)があります。祭具室は儀式用の祭具の収納庫として、至聖所は神父の祈りの場として使われていました。
礼拝の場である二階を見学していると、今までに見てきた教会と比べ、天井が低いような気がしました。石巻市によると、「防寒を考えたロシア風の建築が採用されているため」と言われているとのこと。東北地方の寒さを考慮していることがうかがえます。
建物は、現在は宗教施設として使われていないようですが、全体的に厳かな雰囲気に包まれていました。同時に、屋根に使われている瓦や、和室といった和の要素も多く見られ、親しみも湧いてきました。中にいると、ほっと心が落ち着く場所だと感じました。
近くに寄られた時は、中を見学してみてはいかがでしょうか。
施設詳細
「旧石巻ハリストス正教会教会堂」
■開館時間
午前9時~正午・午後1時~午後5時
11月~3月は午前9時~正午・午後1時~午後4時
■休館日
毎週火曜日(祝日に当たるときはその翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
■観覧料
無料
■所在地
石巻市中瀬3番18号(中瀬公園)
■交通案内
JR石巻駅から徒歩15分
かわまち立体駐車場(2時間無料)または有料駐車場利用